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3度の黒ネクタイ

3度の黒ネクタイ <br />
(【尾灯】写真) RICOH Quarterly HeadLine Vol.36 2022 Summer
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 先月、弔意を表す黒いネクタイを3度着用した。最初は父の三回忌。もう涙はない。遺品整理の会話が淡々と進む。2度目は高校同期の死。気丈に振る舞っていたご家族から急に嗚咽(おえつ)が聞こえる。この3年間で3人もの同期を失い、還暦を過ぎた重みも感じた。そして…。本当に大切な同僚を失った。彼の仕事には決して妥協がなかった。時間を惜しまず丹念に話を聞き資料を読み込み、精緻かつ情熱に溢れた文章を仕立てていく。病室で死の前日まで筆を執り続けた。彼の薫陶を受け成長した若手も数え切れない。議論で対立することもあった。その時に激しても、後を引くことなく次回は笑顔で話し掛けてくる。葬儀場で流れた彼の最愛の音楽はDeep Purpleの“Smoke on the Water”。この曲の嗜好は共通していた。中野哲也。享年59歳。あまりに短い、生き急いだ人生だった。今までの激務を忘れ、安らかにお休みください。(H)
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3度の黒ネクタイ
(【尾灯】写真) RICOH Quarterly HeadLine Vol.36 2022 Summer

 先月、弔意を表す黒いネクタイを3度着用した。最初は父の三回忌。もう涙はない。遺品整理の会話が淡々と進む。2度目は高校同期の死。気丈に振る舞っていたご家族から急に嗚咽(おえつ)が聞こえる。この3年間で3人もの同期を失い、還暦を過ぎた重みも感じた。そして…。本当に大切な同僚を失った。彼の仕事には決して妥協がなかった。時間を惜しまず丹念に話を聞き資料を読み込み、精緻かつ情熱に溢れた文章を仕立てていく。病室で死の前日まで筆を執り続けた。彼の薫陶を受け成長した若手も数え切れない。議論で対立することもあった。その時に激しても、後を引くことなく次回は笑顔で話し掛けてくる。葬儀場で流れた彼の最愛の音楽はDeep Purpleの“Smoke on the Water”。この曲の嗜好は共通していた。中野哲也。享年59歳。あまりに短い、生き急いだ人生だった。今までの激務を忘れ、安らかにお休みください。(H)